長く生きていると様々な経験をします、1987年10月のブラックマンデー、2008年9月のリーマンショックです、リーマンショックの時は転職をして数年目で株式投資もしていて良い勉強をしました。
近日のニュースを見る限り、連日NYダウ平均は史上最高値を更新しているようです、それに釣られて日経平均も上がっているようですね。この本の著者である増田氏の本は、これで60冊目です。彼の書作の特徴は、客観的な一次データをベースに時にはそれをわかりやすく加工した上で、解説をしてくれる点にあります。
その彼が、米国株は完全なバブル状態で近々崩壊することになるだろうと断言し、その理由も述べています。時期は明言していませんが、早くて米国大統領選挙が一段落した頃だろうと思い、その準備をすべきと確信しました。
以下は気になったポイントです。
・アメリカ金融業界には「日銀が長く続けた低めの政策金利から最初の利上げに踏み切ると、必ず世界は景気後退局面を迎える」という経験則がある。今年2回目の日銀利上げは水面に浮上したゴジラが、上陸寸前に雄叫びをあげたようなものではないだろうか。円高になると日本株価は下がる(p13)過去3−4年間の株高は、インフレと円安で賃金を抑制することによって達成されたものである(p15)
・円キャリーとは、どこかの国の金融資産(株、債券など)を買って値上がり益や配当を取ろうとするとき、直接その国の通貨を買わずにまず金利が低くて値下がりしそうな別の国の通貨を借りて、借りた通貨で目標とする金融資産を買うこと、日本で円を0.5%で借りて、利回り4.5%のオーストラリア国債を買う(p18)円高→目標通貨純資産の投げ売り→更なる円高という悪循環で、一番被害が少ないのは、日本国内に居住して円で生活している人や企業(p19)
・日本の労働生産性は先進諸国の平均値より上なのに、賃金は低いまま、実質賃金は下がり続けたので生活水準も下がった。その最大の理由は、政府・日銀が名目でゼロ、実質ではインフレ率分だけマイナスという異常な低金利によって円安をさらに進める政策をとったから(p23)
・アメリカは2000-2002にハイテクバブルが崩壊してから国民生活を豊かにする技術革新をしていない、日本から実質マイナス金利で借りたカネで時価総額の大きな株を買って、巨大寡占企業の価値を上げるだけで実質GDPが上がったような幻想を維持して世界中の資金を呼び込むことでかろうじて資金繰りが回っている(p25)アメリカを含む世界中の投資家たちが、円安に漬け込んだ円キャリー取引を利用して借りた円で米株を買うことで暴利を貪っている(p27)
・生成AIがブームで供給が需要に追いつかないほどGPUの売れ行きがいい、という情報の実情は、マグニフィセント7のデータセンターが必要な事業を展開している企業による大量買いに支えられているとことが大きい(p41)どうやら詐欺まがいの架空取引によって捏造された印象であり、事実ではなかった可能性が非常に高い(p42)実際には売り上げも利益も1セントも増えてなくても、帳簿の上では売上は急増しているし、租利益率も上がっているので株価は上がる(p46)エンロンも系列下の企業と循環取引をして売上や利益を大幅に大幅に膨らませた決算を開示していた、エヌヴィディアの今後はシスコよりも、エンロンに似たものになると考えている(p57)エンロンが破綻し上場廃止となりS&P500に組み入れ続けることができなくなった時に採用されたのが、エヌヴィディアであった(p58)
・生成AIは、性能を高めるごとに顧客向けに送り出す前の「調教コスト」が急激に増えるという大きな問題を抱えている(p64)AIの製造への適用についての問題、1)コンピュータ、電子機器の製造が実績では一番下の15位(p68)で、今後半年の増加予測ではトップ15から脱落している、2)自動車製造が15位以内に入っていない、生成AIこそが完全自律走行を可能にするキラーコンテンツになると期待されていた(p69)
・アップルは、ずっとエヌヴィディアを中心とするGPU絡みの循環取引にも、マイクロソフト=オープンAIを中心とする生成AI絡みの循環取引に加わらず孤高を保ってきたが、すでに完全自律走行のEV開発を断念した上に、2024年6月中旬に今後は生成AIの独自開発路線も撤回して、自社のスマートフォンにマイクロソフト=オープンAI連合のチャットGPTシリーズを搭載すると発表した、アップルが、マイクロソフト=オープンAI連合の軍門に下ったとわかったのとほぼ同時に、それまでパッとしなかったアップルの株価が時価総額一位になった(p95)
・過去10年以上、ハイテク技術開発の焦点となっていたEV、生成AI、ヒト型ロボットには共通点がある、出発点で目指す方向が間違っていたので、開発が進むほど資源の浪費になるという現実である(p98)EVの場合、金属電池に繰り返し充電する形で電力を使おうとすると、大型トラック・バスなどの重いモノを運ぶ自動車になるほど、電池自体の重さが加速度的に増えてしまう。実際に運べるものの量や人の数はほとんど増えないという袋小路に陥る。これはリチウム電池を他の金属に変えれば改善できるものではなく、地球上に存在する金属の中ではリチウムが一番エネルギー密度が高いので絶対に克服できない(p100)
・イーロンマスクによる「トランプ」支持宣言の直後に、大統領選に向けた共和党の要綱に「EV開発・実用化支援の撤回」が盛り込まれた(p107)アメリカのEV業界には、これを満たせばEVの普及は画期的に加速する、と期待されていた「夢の条件」があった、充電1回で300マイル(480キロ)走れるEVの価格がガソリン車全体の新車価格平均値を割り込むこと(p111)この条件は、2023年末にすでに満たされていた、補助金を考えると先進国では2017-2018年には満たされていた。ところが遅々として進まなかった(p112)理由は、画期的技術の導入によりコストが下がったからではなく、値引きをしないと売れないので叩き売りされたから(p113)値引き戦略に転換したのは、中古車市場でのテスラ車の値引きに歯止めがかからず、新車と中古車(中古車市場は新車の2−3倍)の価格差が広がり続けていたから、電池交換に新車価格の6−7割を負担する必要がある(p114)一家に一台の実用的移動手段としての車には全く不適格である(p115)
・1880年から2020年までの140年間にどれほど温暖化が進んだかというと、華氏で57から59度へ2度、摂氏にすれば 13.9から15.0度への1,1度の変化に過ぎない(p130)地球の大気温には2つの精妙な自動制御装置が働いている、1)二酸化炭素が多くなるほど植物の生育が促進されて大気温の上昇を防ぐ、2)気温が高くなるほど水面から発散される水蒸気の量が多くなり上空で雲となって、太陽輻射熱の直射を弱めて(白い雲は太陽からの輻射熱を反射する)気温を低下させる(p132、133)
・過去6億年に限定しても大気中の二酸化炭素濃度は約1500-6000ppmで推移してきた、今から約170年前に当たる19世紀半ばの200ppmを割り込んだ濃度は、植物が生育するためにギリギリの水準であった。産業革命以降に人類が増やした程度の二酸化炭素量は、むしろ植物一般の生育繁茂に貢献した可能性が高い(p135)
・寒さの犠牲者数は、南北アメリカ、欧州、アジアを見渡しても、暑さによる犠牲者の10数倍に達することがわかる(p136)人類は気候関連災害の被害を縮小することには成功しているが、、気候関連ではない自然災害についてはほとんど進歩していない(p138)
・EVの電池製造だけに必要とされる非鉄金属の総重量は、エンジン車全体の非鉄金属部品の重量の6倍になっている事実はとても重要である(p158)EV普及を推進するのは、ありとあらゆる資源を爆買いして、国内に過剰設備を作り続け、その結果として安売り輸出を推進する現在の中国経済体制を支援することになる、到底環境に優しい経済政策とは言えない(p159)エンジン車には全く不要のリチウムとコバルトがEV用電池に必要不可欠という事実が一層EVの普及を困難にしている、どちらも深刻な公害源である(p159)
・人類全体にとって幸運なことに、こうした自動車EV化論が絵に描いた餅に過ぎないことは、EV用電池原材料の中で最も重要なリチウム価格が暴落し、リチウム電池価格も長期じり安基調に入ったことが明らかになってきた、2023年8月に一キロ=80ドルまで上昇したものが、直近では10ドル台前半まで下がっている(p162)リチウム電池価格の値段も同様で、2023年初層のkWh当たり150-180ドルをピークに下がり続け、直近では100ドル以下になっている(p162)リチウム電池火災が厄介なのは、リチウムが燃え上がると燃焼過程で酸素を排出するので、水や難燃性の煙幕などで覆っても全く火の手が衰えずに、かえって燃え広がらせてしまうだけという事実である(p163)
・体積あたりのエネルギー密度(一定の体積の中にどの程度のエネルギーを詰め込めるかという指標)は、様々な素材を使った電池の密度は効率悪く、ガス燃料<液体燃料(エタノール<ガソリン<軽油)である(p165)ガソリンの場合、リチウム電池の上限と比較して、重量で42倍、体積で14倍である(p166)
・S&P500に採用された500社503銘柄のうち、S&P500より良いパフォーマンスをしている企業はわずか25%125社に過ぎない、銘柄が503となっているのは、アルファベット(グーグル)のように、議決権ありと議決権なしの2種類の株が採用されている企業もあるから(p172)サブプライムローンバブルの時(2007-09)、40-50%がS&P500より良いパフォーマンスをしていた(p172)今回のバブルの特徴は本来であれば値動きが慎重なはずの時価総額の大きな銘柄に買いが集中しているので、本当に良い値動きをしているのは銘柄群は125社どころか、10社程度に絞り込むことができる(p173)
・Amazonは今ではもう押しも押されもしない eコマース(ネット通販)の最大手となっているが、アメリカ・オン・ラインが業界首位だった頃には、書籍中心の地味な中堅業者(薄利多売の業態)であった、アマゾンがこだわったのは、自国ばかりでなく世界中のなるべく多くの国々で消費者に届けるまでのラスト1マイルの発達ネットワークの掌握である。そのために単純だが膨大な計算の処理用に大型コンピュータと周辺機器への投資と続けてきた、配送網構築がひと段落してから、クラウド事業に進出して収益性が画期的に改善してハイテク大手になった(p178)
・1ドルの政府債務増加でGDPが1ドル増える(元本回収できるが金利は賄えない)状態だった1990年代初めから急速に政府債務の生産性が向上して、1)ハイテクバブルのピークだった2000年には4ドルに上がっていた、おそらく2000-2002年に崩壊したハイテクバブルは、アメリカ経済にとって株価が急騰する根拠のあった(実質的な豊かさの増加を伴った)最後のバブルだったのだろう(p183)2)2012年には1ドルの債務増加で20セントしかGDPが増えない、資本家が自分たちの取り分を守るために勤労者の取り分を極限まで圧縮した時価総額バブルが始まるきっかけ、3)2017年からトランプ政権下でやや持ち直した生産性が、2021年のバイデン政権下で60セント未満に定着してしまった、トランプ政権は欧州諸国での緑の革命派、グローバリストたちの気候変動危機説に懐疑的で、再生可能エネルギーや自動車のEV化に冷淡で、政府債務を死に金とするようなプロジェクトに使うことを防いできた(p185)
・もうこれ以上勤労者の取り分を減らすことができないと見た大手企業経営者たちが、勤労者でなく、上場・非上場を問わず、中小零細企業から大手企業へと所得移転する手段として起こしたのが、時価総額集中バブルなのではないだろうか(p187)