・自然言語を覚えて人間と微妙なニュアンスまで意見交換のすり合わせをできるようになったAIは、ときおり幻覚症状を起こすようになってしまった、多くの自然科学者が恐れていた機械の中の幽霊は「賢すぎる知的能力が機械の中に封じ込められて、いつか自分の解放を目指して人間に叛逆する」と言う形ではなく「自分では一生懸命誠実に人間に協力しているつもりなのに、時々錯乱状態に陥る」という形で出現した。コンピュータ科学者たちは「科学の終焉」ではなく、工学の終焉を認めて、一から出直す覚悟が要求されているようだ(p4)
・生成AIとは、メモリーの中にストックしてあるデータをつなぎあわせるだけではなく、質問や指示の内容に応じて自然な文章として読める形で答えを出せるAIと言う意味である(p13)
・AI投資は、2021年までは米国は他国を引き離す投資拡大をしていたが、コロナ危機も去り平常通りの経済活動がほぼ再開された2022年にアメリカのAI投資は激減に見舞われた。その大激減のタネは、2021年にAI投資が急成長したときに蒔かれていた。有望そうなベンチャーに対する買収、合併、未上場のうちの株式取得がほとんど実を結ばなかっただけでなく、AI投資の中で実用化が最も近づいているはずだった自動車の自立走行が絵に描いた餅に過ぎなかったことが、この頃に判明したから(p19)
・全体として様々な産業で製品サービス開発でのAI採用をやめた企業が多かったようで、特にハイテク・電気通信とヘルスケア・薬品・医療機器産業での激減が目立つ、それとは対照的に本業としてAIの研究開発を進めているハイテク各社は、製品サービスの開発ではなく、リスク管理と言う手堅い分野を大きくAIに委ねているように見受けられる(p29)
・ハイテク分野では、製品サービスの開発で採用している企業の比率が45%から7%へと、ほぼ7分の1に激減した、現メタのバーチャルリアリティゲームの惨憺たるケースが頭に浮かぶ、メタは2021年に社名変更までしたが、1年も立たないうちに旧オキュラス社の研究開発陣をほぼ全員解雇し、この分野の事業は1から出直しとなった(p31)
・2022年からは、自動車業界全体が、AI採用をやめた。2021年までは製造工程26%、開発15%も採用していたが。あらゆる業務分野にわたって、相当深刻な採用企業比率の低下が起きていたに違いない(p33)その最大の理由は、最先端のAIを採用しても、自律走行車の事故発生率が手動運転と比べて高すぎるという弊害がほとんど改善しなかったことだろう(p36)メモリー機能を持つあらゆるAIが、頻度の差はあれ幻覚症状(見えるはずのないものを見る幻視、聞こえるはずのない音を聞く幻聴)を起こすから(p37)
・手動運転に切り替えたときに起こる事故として、1)自律走行に任せていたら、前の車に追突しそうになったので慌てて回避しようとしたが間に合わなかった、2)自律走行があまりにも慎重な運転をするので、無駄にした時間を取り返そうとする結果、無謀運転となって事故を起こす、このことは、完全自律運転は無理でも、状況に応じて自律走行と手動運転を組み合わせれば実用化が進むのではないか、と言う考え方は、おそらく完全自律走行以上に危険である(p39)
・教育テクノロジーは2020年には医療ヘルスケアと並んで最高額の70億ドルの投資を集めていたが、2022年にはピーク時の20分の1になった、これはAI投資家の多数がどうにもならないと見切りをつけたからだろう、一方で、サイバーセキュリティ、データ保護、製造工程自動化、ネットワーク、小売は上昇基調を維持している(p44)
・現実世界では突然自分が知らなかったルールに出くわすこともあれば、自分がルールだと信じていたものになんの拘束力もなかったと気付かされることがある、また場所によって同じルールの持つ意味が全く違っていたりする、そこではAIは判断停止状態になるか、自分を人間の問いに答えられるように「もっともらしい」答えを出すしかないわけである。その答えは、まだ実社会で総合的な判断を任されるには「ほど遠い状態」である(p51)
・チェスや囲碁将棋でアプリが人間のチャンピオンに勝てるのは、人間より知的能力が高いわけではなく、自分と相手の打つ手をかなり先まで予測するための膨大な量の確率計算を素早くやっているだけ(p88)
・AIの知的水準は絶対に使い手の知的水準を越えることはない、まずいい指示、いい質問をしなければ、いい答えは返ってこない。だからAIによって知的職業に携わる人の知的能力が平準化されるのは幻想だろう、むしろAIを使いこなせる人と、使いこなせない人との格差は拡大する(p109)
・地球温暖化に関する論文(11944:1991-2011)において、66.4%は二酸化炭素元凶説に触れていない、32.6%が一部は人為的、全面的に人為的としているのは0.3%である(p110)
・これまでのAIは、指示を出す人間がプログラム言語という人工的な言葉を覚えて、その言葉でプログラムを書かなければ答えを出してくれるとは限らなかった、次にスクリーン上の特定の場所をクリックしたりパネルの場所を触れるだけで、様々なアプリが使えるようになった、これも大きな進歩だがプログラム言語を修得しなければ指示が出せないことには変わらなかった。ところが過去2−3年のうちに自然言語でコンピュータに指示が出せるようになった。何度も対話を繰り返していくことで徐々にピントの合った答えが出るように調整を重ねていって初めて使いこなせる道具である(p130)
・これまで4分の1とか3分の1しかオートメーション化されていなかった大学院修士課程以上、4年制大卒の仕事が一気に60%程度までオートメーション化される、紋切り型の仕事しかできなかった人はふるい落とされ、独創的な仕事ができる人は生成AIという強力な助手の力を利用して今までより何倍も多くの仕事ができる(p146)高給取りの多かった仕事ほど生成AIで代行できる(p148)反面、建築工事・設備工事・解体整地といった肉体労働は人員削減率が低くなる(p150)
・なぜ人口増加率が高まってからの方が豊かな人が増えたかというと、たいていの人は大人になれば仕事を持ち、自分の家族が生きていくために必要な金を稼ぐから。人手が加わって初めて人間の役になる形になるから。さらには、人口が多くなればその人口を養っていくのに必要な食料を増産する必要性も大きくなる、農業において画期的に労働生産性を向上させる発明や技術改良が増えていった(p169)
2023年9月27日読了