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家計は、経営だ。

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本書は、家計に不安を抱える女性、とりわけシングルマザーに向けて、「家計を経営として考える」という視点を示した本である。著者が込めた思いは、「シングルマザーが資産作りを諦める必要性は、本当に、ない」という言葉に集約されている(p4)。著者にできるのは、それぞれの家庭に本人がまだ気づいていない資源が眠っていることを伝えることであり、その資源をどう使うかを決めるのは読者自身である(p6)。

37年間経営を続けてきた著者が示す成功の法則は三つである。第一に、チャンスは必ずあり、それはすでに自分の家庭の中に眠っていること。第二に、チャンスに備えて勉強しておくこと。第三に、決めたら即断即決し、最後までやり通すことである。著者はこれを「勝つまでやめない」と表現する(p7、p118)。

そもそも著者にとって経営とは、「今日の1円をどう使うか」を決め、「明日の1円をどう変化させるか」を設計することである。決算書が示すのは昨日のお金の使い方であり、家計簿も同じである。重要なのは過去の記録だけではなく、これからのお金をどう動かすかである(p16)。

その際、著者が最も重視するのが「売上ではなく利益を見る」という考え方である。収入が増えても支出も増えれば家計の利益は残らない。反対に収入が減っても利益率が上がれば家計は強くなる。したがって、収入を増やすだけでなく、増えた収入を生活水準の上昇に使わず、そのまま資産形成へ振り向けることが重要になる(p29、p33)。パーキンソンの法則が示すように、支出は収入に合わせて膨らみやすい。だから「余裕ができたら始める」のではなく、余裕そのものを意識して作らなければならない(p54)。

家計経営では、時間も重要な資産である。経営者は「早く始めた者が勝つ」と考える。投資だけでなく家計全体において、時間は後から取り戻せない最大の資源である(p53、p198)。著者は世界株式の長期的な平均リターンについて触れながら、あえて年4%という控えめな数字で試算する。市場には良い年も悪い年もあり、同時に読者に「4%なら届く」と感じてほしいからである(p26)。また、短期的には市場が大きく下落しても、長期では回復と成長が起きてきたとして、「勝つまでやめない」という原則を投資にも当てはめている(p183)。

支出についても、著者は経営者の視点を求める。必要なのは、第一に投資と経費を分けること、第二に判断の時間軸を10年後まで伸ばすこと、第三に取引相手のビジネス構造を意識することである(p108)。また、「その投資の目的を5秒で言えないなら、それは投資ではなく浪費」と考える(p80)。子どもの習い事も数を広げすぎるのではなく、「勝てる領域に集中投資する」という経営の原則を応用する(p74)。ただし習い事の価値は上達だけではなく、「その扉を開けさせてもらった」という記憶を子どもに残すことにもあると著者はいう(p85)。

さらに著者は、「うちには資源がない」と考えるのではなく、「資源はあるはずだが、まだ見えていないだけだ」と考えることが経営者の目線だと説く(p88)。副業は自分が働く時間を増やすが、資産形成は「今あるお金に働いてもらう」ことであり、お金が働く時間を増やすという違いがある(p112)。何もしないことも安全ではなく、静かな損失という見えないリスクを引き受けている場合がある(p132)。

著者は家計資産を「入口の数×出口の質×時間」という式で表す。入口とは収入源の数、出口の質とは未来に貢献するお金の使い方、時間とは家計経営を続ける期間である。この三つは掛け算なので、一つがゼロなら全体も伸びないが、逆に一つを少し改善するだけでも全体を大きく伸ばせる(p148、p150)。

ここで著者は、高年齢になり、すでに「時間を失っている」と感じる人にも可能性があると述べる。時間という要素が少なくても、残る二つ、すなわち「入口の数」と「出口の質」で部分的に補うことができる。収入源を増やし、意図のない支出を徹底的に減らし、家計の未来に貢献する支出へ振り向けることで、時間の短さを補うことができるという。したがって、時間が短いから始めないのではなく、短くても始める方がはるかに良いというのが著者の考えである(p154)。

そして経営者に最も必要なのは「決める力」である。何をするか、何をやめるか、何に投資するか、何に時間を使うかを決めなければ何も動かない(p174)。さらに著者は、人間の脳は「決めた」瞬間から、そのゴールに向けて無意識に動き始めると述べる。これは著者自身の経営経験とも一致しており、大きな決断をした後には、必要な情報が目に入り、必要な人に出会い、やがて成果につながるとする。これは超能力ではなく、脳が「決めた目的」を優先的に意識するようになるためだという(p224)。だからこそ著者は、すべてを完璧に準備してからではなく、7割の準備で決め、残り3割は始めてから埋めることを勧めている(p225)。

著者にとって、家計経営の本当のゴールは単に資産額を増やすことではなく、「子どもの選択肢を増やしていける」状態を作ることである(p213)。また、経済の中心には家計があり、企業、政府、銀行、保険会社など、あらゆる経済活動の出発点と着地点は家計だと位置づける(p234)。

最後に著者は、恐怖によって家計経営を始めさせることを否定する。「このままではだめだ」と不安を煽れば、一時的には人を動かせても長続きしない。恐怖は継続の燃料にはならず、「明るさ」こそが15年、20年と家計経営を続ける力になるとする(p238)。本書が伝えるのは、家計とは節約の記録ではなく、限られた資源を見つけ、今日のお金と時間を意図的に使い、未来の選択肢を増やしていく「経営」そのものだという考え方である。

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