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summary

変異する資本主義

変異する資本主義の写真

・シュンペーターによれば「資本主義」とは、物理的生産手段の私有、私的利益と私的損失責任、民間銀行による決済手段の創造というという特徴を備えた産業社会である。他方「社会主義」とは、生産過程の運営を何らかの公的機関に委ねる制度である。そして現実の経済システムは、純粋な資本主義と純粋な社会主義の中間形態である。また資本主義はその本質からして、過程である、言い換えれば、資本主義は不段に変異し続けるものである(p3)

・バイデン政権は大方の予想に反して成立直後から画期的な経済政策を打ち出した、第一弾は、米国救済計画と称する1.9兆ドル(200兆円)もの大型追加経済対策。ワクチンの普及などの医療対策に加えて、一人最大1400ドルの現金給付(年収8万ドル以上の高所得者を除く)や、失業給付の特例加算、3000億ドルの地方政府支援などから構成されている(p21)トランプ政権下で発動された経済対策と合わせるとその規模は、5.8兆ドル(名目GDP比較で28%)(p21)

・少なくとも言えるのは、経済政策の背景にある思想や理論に関していえば、アメリカにおいて、1980年代初頭のレーガン政権以来の抜本的な転換が進みつつあるというのは間違いない。静かなる革命と評すべき大転換である(p52)

・自然利子率がゼロを下回る水準にまで低下した理由は、投資性向を抑制し貯蓄成功をあげる構造的な力が働いているからだろう、例えば先進諸国の人口減少、資本財価格の低下、必要資本量の減少をもたらす技術革新によって投資需要が減退した。(p62)

・長期停滞を脱するにはどのような処方箋があるか、一般的な経済政策は、金融政策・構造改革・財政政策の3つである。金融政策は長期停滞下では名目利子率がゼロ下限に達している、構造改革によって供給力が高まってもそれに伴う需要の増大が同時になければ、返ってデフレ圧力が発生してしまう。残されたのは、財政政策、すなわち公共投資・民間投資を促進して、支出を拡大することしかない(p64)

・銀行は信用創造によって、いわば無から貨幣(預金)を生み出すことができるので、貸し出しに必要なのは、事前の資金ではなく、信用できる仮手の存在だけということになる、企業によって行われる投資が、貯蓄を作る。ということは、過剰貯蓄によって利子率が下がるとか、貯蓄不足によって利子率が上がることはあり得ない(p76)

・政府が赤字財政支出をするにあたって国債を発行しその国債を銀行が購入する場合、銀行は中央銀行に設けられた準備預金を通じて買う、これは中央銀行が供給したものであって、銀行が集めた民間預金ではない。そして政府が赤字財政支出を行うと、支出額と同額の民間預金が生まれ、民間貯蓄は増える、従って財政赤字によって国債金利が上昇することはあり得ない(p80、82)従って、対GDP比の政府債務残高という指標は特に意味がない(p85)

・バーゼル規制においては、自国通貨建て国債については格付けのいかんにかかわらず、信用リスクをゼロにすることができるとされている。従って、日本、アメリカ、イギリスは国債を自国通貨建てで発行していることからデフォルトの可能性はない。しかしユーロ加盟国は自国通貨を放棄しているのでデフォルトのリスクはある(p86)

・日本が財政支出を拡大すべき理由は、インフレ率が極めて低いかマイナスだからで、かつ財政支出を拡大すべき分野(貧困対策、防災インフラ整備、パンデミック対策、化学技技術振興など)がいくらでもあるから、プライマリーバランスの赤字も財政運営の指標としては何の意味もない(p89)

・企業組織が株式市場に対して優位であれば、経済は価値創造的、イノベーティブなものとなる。それが逆転し、株式市場が企業組織に対して優位になれば、イノベーションは鈍化し、価値は創造されなくなる(p111)その結果、企業組織の行動原理は、かつての内部留保と再投資から、削減と配当へと変化した(p114)

・冷戦の緊張が緩和しソ連が脅威で亡くなったので、共産化を恐れて自国の労働者を保護し国民に福祉を供与してきたが、その必要性が薄れたのである、金融階級は、労働者階級に配慮しなくても良くなった(p159)

・バイデン政権による経済政策のパラダイム転換は、新型コロナウィルスと中国という外的脅威が駆動していると言って良い(p167)

・もしパンデミックが長期化するならば各国の資本主義経済は、かつてない大きな政府を有したものへと変貌する。対GDPの政府支出が6割以上となればこれは社会主義と言った方が良いかもしれない(p294)

・新型コロナウィルスと中国のハイブリッド軍国主義の台頭により、世界は社会主義化(政府の経済社会への関与の強化と積極財政)へと変異を遂げていくだろう(p301)