・時代の転換点というものは、いつも静かにあっけなくやってくる。今、我々が生きる2020年代の始まりは、後に「あれが歴史の転換点だった」と認識されるかもしれない、20世紀を支えた化石燃料型の経済が、気候対策型の経済へと一気にシフトした1年間として、これまでの経済の前提を揺るがす大きなシフトがあらゆる業界で同時多発的に動き始めている。その1つの象徴的瞬間は、2020年10月7日に訪れていた、この日エクソンモービルの時価総額が、ネクステラ・エナジー(1925年に創業した地方電力会社)に抜かれた。この20年間、風力発電、太陽光といった再生可能エネルギーで全米を席巻し、この10年間で株価を5倍近くにまで上げてきた(p9)このような動きは、イタリア、スペイン、デンマークでも起きている(p11)それらの企業は本書で「グリーン・ジャイアント」とよび、いずれも世界のエネルギーが転換期を迎えることにいち早く気づき、10−20年前から再エネへ一気に舵を切った企業である(p11)
・日本では菅首相が、2020年10月26日にカーボンニュートラル宣言を行った、象徴的だったのは、これは経済成長の制約ではなく、温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし大きな成長につながるという発想の転換が必要としたことである(p17)
・2020年だけで中国は3840万kW分の石炭火力を新設した、これは同じ年に世界で廃止された石炭火力の2倍を軽く超える(p43)しかし716万kWの風力発電所を新設しておりこれは2019年に世界全体で建設された風力発電の総量を上回る、太陽光発電も4820万kWを新設している(p45)中国の現状はCO2最大排出国だが、同時に次世代エネルギーの根幹を握っているのも事実である(p45)
・米国では2019年の時点で歴史上初めて、再エネの消費量が石炭を超えた、欧州では2020年の発電部門において、再エネ由来の発電量が石炭燃料を超えた、2021年は再エネへの投資額が化石燃料を超える初の年になるとしている(p65)
・1883年にダイムラーがガソリン燃料とする内燃機関の開発に成功、1903年にはライト兄弟がガソリンエンジンを用いた飛行機を発明したが、石油が主要エネルギー源として石炭を超えたのは、1960年代である。石炭の消費量自体は伸び続け、ピークを超えたのは2013年、アメリカでシェールガスと呼ばれる天然ガスが採掘される様になってから。(p66)
・CAFE規制では、EVは走行中に二酸化炭素を排出しないことから「ゼロ」とカウントされる。カウントがゼロのEV を1台売れば、もう1台販売した車の燃費が12キロ/Lでも、罰金(1キロ走行当たりCO2排出量95グラム=24キロ/L)を免れることができる。欧州は独自のルールを一気に強化することで自動車メーカのEV化を促している、現行のEU規制では、電池の製造過程、生産工場の排出は無視する Tank to Wheel方式をとっている(p136)
・テスラのモデル3とトヨタのRAV4を比べると、製造段階でモデル3のほうが2倍近くCO2を排出していることがわかった、モデル3が3.3万キロ走行するとRAV4と並ぶ結果となった。もしその前に廃棄してしまうことがあればガソリン車のほうがエコとなる。(p145)
・中国のEV メーカとしてはNIO(2014年創業)さらに、SGMW(GM、上海汽車などの合弁)がある、SGMWの特徴は最安モデルで48万円という安さ(p153)
・日本5大商社による石炭火力発電からの撤退は進んでいるが、銑鉄に用いられる原料炭ではそれほど大きな動きにはなっていない。鉄鋼業において高炉を代替するテクノロジーがまだ確立していないから(p172)その代わり鉄屑などを「電炉」を使ってリサイクルする方法は、排出量が高炉の4分の1に抑えられるので注目されている(p173)
・若い世代ほど気候変動への関心は高い、ブーマー(1964年以前)<X世代(1965-1980)<ミレニアル世代(1981-96)<Z世代(1997以降)(p191)
・現在の火力発電所は、燃料に石炭を使うものとLNGを使うものがある、石炭を使う発電所はボイラー型、LNGを使うものはタービン型、ボイラー型の燃料を石炭からアンモニア、タービン型の燃料を水素に変えていくことが目標である。(p232)水素の輸送手段は確立されていないので、水素と窒素を化合させてアンモニアで輸送するのが現実的(p233)
・今の気候変動をめぐる示唆がある、1)気候変動対策がテクノロジーのフロンティアとなりつつある(ストライプという金融決済インフラ)、2)担い手はミレニアル以下の若い世代、3)アメリカという国が持つダイナミズムを象徴している(p243)
・この本では日本の負け続ける姿しか書けていないのは、ピークにあった1990年前後の成功体験から抜け出せず、その仕組みを変えたくないということに尽きる。スマホもインターネットもエネルギーも現状をできる限り維持したいというバイアスが主流派を占めて、次世代を率いるようなビジョンやテクノロジーは生まれてこない。その中でまだ芽生えていないテクノロジーの種としては、人工光合成、核融合炉などがある(p246)
2022年10月25日読了