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日本経済の勝算〜なぜ今、世界が日本に注目するのか〜

日本経済の勝算〜なぜ今、世界が日本に注目するのか〜の写真

・インフレを安定化させるには「不幸なやり方」と「幸福なやり方」がある、不幸なやり方とは 日銀に急激な 利上げをさせ、 景気を悪化させることで インフレを抑え込む方法である。幸福なやり方とは、 投資を増やして供給能力を拡大し、 それによってインフレを安定化させる方法である。 供給能力が増えれば、潜在成長率は上がり、 労働生産性は向上し、 実質賃金の上昇につながる。 サナエノミクス が目指すのはこの幸福なやり方である、 アベノミクスの焼き直しという批判もまた外れである、 アベノミクスでは大規模な金融緩和が主役である が、サナエノミクスでは、財政政策が主役であり金融政策には「 緩やかな 利上げ」を求めている、金融緩和ではなく 利上げであり全く逆のアプローチである(p5)

・ 貯蓄率と財政収支を合計した値が十分な マイナスでなければ、経済は十分に成長できず、 家計にも所得がしっかり 回らない。ところが 日本では この値が ほぼゼロ近辺で推移してきた、 これこそが30年 停滞の真因である(p6)

・1997年に起きた 金融危機において、 企業は投資を控え 借り入れを減らし リストラを進め コストを削減し 内部留保を積み上げる方向に舵を切った、 国内への投資よりも 借金の返済を優先し、 従業員への還元よりも財務体質の強化を優先する「 コストカット 型経営」への 大転換が起きた(p20) 企業にとっての合理的な戦略であるコスト型経営を全ての企業が取った結果、 経済全体として総需要が不足し パイがますます 拡大しなくなるという「合成の誤翳」が生じた(p24)

・企業は与えられた環境の中で最善を尽くす しかできない、環境 そのものを変えることは個々の企業の力では不可能である、 環境を変えるのは政府の役割である。 政府は財政出動で 経済規模を拡大させなかったからこそ、企業は コストカット 競争を強いられた(p25)

・ネットの需要= 企業 貯蓄率+ 財政収支(対GDP比)、2つを足す理由は、 企業と政府を合わせた「お金を使う力」を見るためである、 筆者の分析では、 GDP 比でマイナス5%程度が適正水準である。 この水準であれば経済は適度に膨らみ、 名目 GDP は 年率3%程度で成長、 物価も2%程度で安定的に推移する(p29)

・財政収支だけを見れば日本政府は継続的に赤字を計上してきたが、 その赤字は 企業貯蓄率のプラス 分を相殺するのに「ギリギリ」の水準でしかなかった、 だからネットの資金需要はゼロに張り付いたままであった(p31)

・2020年以降のコロナ 禍は日本経済にとって 危機であると同時に 一つの実験の機会であった、 補正予算の規模は2020年度だけで数十兆円に達した、 この結果 ネットの資金需要は一時的に GDP 比 マイナス5%となり、 その結果 日本の名目 GDP は30年近く 横ばいだった 500兆円から、600兆円台後半へと 急拡大した、株価も上昇し、 企業業績も改善し、 税収も大幅に増加した(p35)

・日本で賃金が上がらない 根本的な原因は、経済全体のパイが拡大しなかったことにある、名目 GDP が30年間 横ばいだったことは、 経済全体で生み出される所得の総額が増えなかったことである、パイが大きくならなければ そこから分配される賃金も増えようがない(p41)

・ 家計が苦しく感じるのは、個々の家計の問題ではなくマクロ経済の構造的な問題である、企業と政府の 支出が不十分なため 家計に所得が回らない 構造になっている(p45)

・アメリカの企業部門の純債務は、 GDP 比で207%に達している、アメリカ 企業は積極的に借り入れを行い 投資を続けている、ユーロ圏の企業も 61%である、 それに対して日本の純債務は「マイナス10」 これは日本企業は超健全な財務状態にありながら成長できていない、成長の機会を逃し続けていることを意味する(p49)

・ アベノミクスの成長戦略は、 規制緩和と既得権益の破壊によって 民間投資を促そうとしたが、結果は期待通りにならなかった、 規制緩和を進めても、法人税を下げても 民間投資は思うように増えなかった。 その理由は 、需要がなければ 投資は増えないからである。 投資しても需要がないという状況では規制緩和も減税も効果を発揮しない(p56)

・ 財務省 自身が、 国債 60年償還ルールは「国債残高を減らすためのルールではない」「 節度ある 姿勢を見せるための建前に過ぎない」と認めた、 言い換えれば 日本でも実際にはアメリカなどと同じように、国債は借換債で永続的に運営されているということである(p75)

・国債比較を行う際には 総債務残高を用いることが一般的であった、 多くの国では 金融資産が小さいので総債務残高と純債務残高の差は大きくない、 しかし 日本は 例外的に巨額の金融資産を持っている。年金制度の違い、 外貨準備の規模など日本固有の事情がある。 さらに日本の財政の見せ方は「悪く見せる」 バイアスがかかっている可能性がある (p86)

・従来の財政運営は、 プライマリーバランス( 基礎的財政収支)の黒字化 を目標としていた、 これはその年の政策的経費をその年の税収で賄うという考え方で、 成長 投資も含めて全ての質に財源を求めるものであった。 一方 純債務残高の GDP 比 という指標は、 負債と資産のバランスを見る、 国債を発行して成長 投資を行っても、それが資産として残るのであれば 純債務残高は大きく 悪化しない(p87)

・日本とアメリカの国債費の比較をすると、日本の場合は 債務償還費18.3兆円、 利払い 比 11.3兆円に対して、アメリカ の場合は 債務 召喚費0、 純利払い費145兆円である、 違いが2つある、1) アメリカの場合は 債務 償還費が含まれていない、国債は借換債 で永続的に運営されるという前提があるからである。国債の元本を返済する必要がないのだから 予算に債務償還費を計上する必要がないというグローバルスタンダード である、 日本だけが 国債60年償還ルールという見かけ上のルールに基づいて 実体のない債務償還費を計上している。18兆円というお金は実態のないもので実質的な 歳出には含まれない、2)日本の予算に計上されているのは政府が支払う 利子の総額である一方、 アメリカの予算に計上されているのは「純利払い費= 政府が支払う 利子から政府が受け取る金利収入を差し引いた ネット」である、この違いは非常に重要である(p95)

・日本政府が保有する金融資産には、 外貨準備200兆円、 年金積立金 200兆円、 日銀保有国債からの利子環流、 財政投融資の貸付金・ 政府出資金など様々な金融資産があり 収益を生んでいる。 見落とされているのは、金利が上がれば利払い費は上がるが 政府の金利収入も増える (p97)

・債務償還費 を除外し、 利払い費を 準利払い費に変更すると、歳出に占める国債費の割合は、 わずか6%になり、 アメリカの約14%の1/3である、 グローバルスタンダードの計上方法で見れば、日本の国債費負担はアメリカよりもはるかに軽い(p100)

・支出には、義務的支出( 法律によって支出が義務付けられているもの、 社会保障など)は法律を変えない限り 自動的に支出されるので 基本的に財源が 紐付けされる、一方 裁量的支出(公共投資、 人件費など)は、財源を紐付けない、 これが グローバルスタンドの考え方である、 つまり 裁量的支出は柔軟に運営する(p105)

・ 最近日本の30年 国債金利が3%を超える水準まで上昇している、 これを見て 財政 不安で金利が上がっていると主張する人がいる、 しかしこの解釈は誤りである。 30年国債金利3%台というのは、名目 GDP 成長率3%台を織り込んだ「 正常化」 なのである(p118)

・政府と企業を合わせた純債務残高(GDP比)は、 アメリカ313%、 ユーロ圏118%、 日本 72%、 日本の負債は主要国の中で 最も小さい、 日本の負債構造は 主要国の中で 最も健全である、 だから日本ではこの30年間 金利急騰が起きなかった(p121)

・日銀が利上げをしても円安が止まらないのは、内需拡大の期待がないからである。 内需がしっかり 拡大するという期待が生まれれば、 将来の政策金利はインフレ 2%まで上がるという見方が増える、 そうすれば円安 トレンドは円高トレンドに 転換するであろう(p124)

・歴史を振り返ると通貨が紙くずになった事例には共通点がある それは、 供給能力の崩壊 である。 戦争で工場が破壊された、自然災害で インフラが 壊滅した、政治の混乱で生産活動が停止した、こうした事態で通貨を発行すれば激しい インフレが起きる、 逆に言えば 供給能力が維持されている限り 通貨が紙くずになることはない(p131)

・政府は5年に一度 年金の「財政検証」を行う、 その結果 驚くべきことがわかる、 実質 GDP 成長率 1%の場合 100年後も厚生年金の積立 度合い(= 年間支出の何倍の基金があるか) は発散する、つまり 基金は増え続ける、一方 ゼロ成長率の場合は 積立 度合いは 1倍まで低下する、基金は取り崩されるが 枯渇 はしない、 つまり 実質 GDP 成長率がわずか1%あれば年金財政は100年後もかなり 健全である、 現在の日本の 潜在成長率は0.6%程度と言われている(p140)

・高市政権は、0を基準とした低圧 経済から、受給ギャップをゼロではなくプラス 2% 超に 押し上げる「 高圧 経済」を目指す、 これは需要が標準的な供給能力をやや上回る状態を意味する、 これが実現すると経済に好循環が生まれる、企業の投資意欲が高まる・ 労働市場が引き締まる・ 景気回復の実感が広がる・ 企業 貯蓄率がマイナスに向かう (p160)

・ 投資家として日本経済の投稿を見る際に注目すべき指標とは、 ネットの資金 需要・需給ギャップ・ 設備投資 サイクル・企業 貯蓄率・ 純債務残高 GDP 比である(p256)