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資本主義と、生きていく。 歴史と思想で解き明かす「構造的しんどさ」の正体

資本主義と、生きていく。 歴史と思想で解き明かす「構造的しんどさ」の正体の写真

・ 哲学者 アレントは西洋の多くの言語では働くことは「仕事」と「労働」という2つのタイプに分けられる と指摘している、仕事という言葉には、人が自分の手や頭を使って「工夫しながら働く」という 肯定的な意味合いが含まれる、労働という言葉には、人が身体を使って「苦労しながら働く」という 否定的な意味合いが含まれている(p81)

・マックスウェーバーは、ルターが「社会の中で労働することは神に仕える行為である」ことを強調した点に注目する、 ルターは労働を単に生計を立てる手段とは考えず、その営みに積極的な宗教的価値を与えた。この流れを徹底したのがカルヴァン の予定説である「人が救済されるかはすでに神によって決められている」という考え方である、彼らは自分が「選ばれている」という確証を求めるようになり、 その外的な「印」とされたのが、禁欲的な生活と職業における勤勉な労働であった(p83)

・キリスト教とユダヤ教の共通の聖典である 旧約聖書には「貧しい 同胞から利息をとってはならない」と規定されている、キリスト教もユダヤ教 も同胞間での利子を禁じていた(p99)

・ 自分の本当の欲求がわからない、という 引き裂かれた混乱状態が「 消費」という追手の 正体なのではないか、 そこから逃れるための第一歩は、何かを欲しい、したい、と思った 心と少し距離を置き「 それは本当に自分の欲求か」を自分に問いかけることである、 この区別によって普段買っているものや SNS に費やしてる時間の5%でも削ぎ落とすことができれば、小さな心の余白が現れてくる(p124)

・資本主義を全否定したり 全肯定したりするのではなく、 資本主義とどう付き合っていくべきかを自分の頭で考える必要がある、 これこそが「 バランスの原則」に 則った態度である(p131)

・資本主義の6つの構成要素、 分業・ 市場・ 商品・ 資本・ イノベーション・ 金融が、6人の追手( 時間・消費・ お金・ 労働・ 成長・ 数字)を生み出し、 私たちの 追われている感覚(しんどさ)に繋がっていることがわかる、分業・ 市場・ 商品は、資本主義の基本装置である、 資本・ イノベーション・ 金融は、資本主義の加速装置である(p133)

・ 分業することで 生産性は奇跡的に高くなる、アダムスミスはその要因として、1)1人の作業者が特定の作業に特化することで 熟練度が向上する、2)作業を切り替える際のタイムロスの節約、3) 無数の機械の発明、 という 3点を挙げている(p139)

・ なぜ 分業と時間が結びつくかというと、 分業は生産性の向上を目的とし、そのシステムが機能するには「時間の統一」という条件が不可欠になる、生産性を高める場合 全員が同じ時間に作業を開始し 同じリズムで動かなければならない、 つまり 分業には「時間に追われる 労働者の存在」(p145)

・そもそも 市場とは、財物やサービスの交換を通じて 各個人の利益を実現する場所であると言える 、中世ヨーロッパの商取引のあり方と資本主義における市場の違い の一つは、規則のない自由市場という建前である。自由市場では必然的に 競争が生まれ、 品質向上・ 価格低下をもたらし 消費者の利益につながる、 さらに重要な違いとして「規模の拡大の有無」がある、分業を発達させて生産性を高めるためには「 市場の拡大」が必須条件になる(p153)

・ 分業によって生産性が飛躍的に向上した結果、 生産能力は上がり続けるのに人々はもう必要なものは持っているという状況に直面した、 このままでは 市場が飽和状態になり 企業は倒産し 労働者は失業してしまう、 この難問に対して20世紀に入ると国家や企業は画期的な発送の転換を行った、 それは「 消費者のニーズを満たすのには限界がある、ならば ニーズ そのものを作り出せばいい」というものであった、 こうして市場は単なる商品の売買の場から「欲望を生産する装置」へと変貌した、 これがないと恥ずかしい・これがあればもっと素敵になれる、という感情に火をつけていった (p161)

・マルクスは、貨幣とは 世界中に存在するあらゆる 商品の中でも 唯一の特徴を持つ特別な商品であると考えた。人類は金などを貨幣として使用する 以前は、様々な生産物を価値表示の手段として用いていた、 しかしそれでは 効率が悪かった、自分の欲しいものを持っていてかつ自分の商品を欲しがってくれる相手と出会えないと彼らが望む 交換が成立しない、とても効率が悪い。 これを解決するには、 あらゆる 商品に共通の統一的な価値基準を作れば良い 、例えば全ての商品を「 米」で表現する。 このようにして貨幣 だけ があらゆる 商品と自由に交換できるという「 魔力」とも呼ぶべき 特別な力を持つようになった(p177)

・ 資本のマジックがいかにして可能であるか、 その答えは「 資本家は 労働力という商品を購買し 消費することによって、価値を増殖させている」ということになる、労働力という商品だけが、 他の全ての商品とは違って、新しい価値を生み出す力を持っている。 この発見こそが、マルクスの資本主義分析の革新である(p191)

・ AI の普及により コミュニケーションや恋愛の仕方も変わった、 従来の 多くの職業が不要になると、就職活動や教育のあり方 も変わる。 さらに 今後、 選挙や政治のあり方までもが変わっていく可能性がある。 創造的破壊とは 社会全体に大きなインパクトを与える出来事である。 この創造的破壊は 単なる技術革新とは違う、 社会構造 そのものを根底から変える力を持つ。自動車の登場は 馬車産業を壊滅させ、 都市構造や交通制度、 人々の時間感覚 までを改革した、 それによって失業した人も大勢いたが 一方で 新しいビジネスチャンスも生まれた(p219)

・ 欲望 拡張 原理に基づく モノサシとは一体何であろうか。 資本主義社会において、 より効率的に生産し(分業=時間)、より 消費者の欲望を喚起し(市場=消費)、より高い 剰余価値を上げるために 働き(資本=労働)、より高い 付加価値を生み出し続け(イノベーション=成長)、より 大きな定量的 成果を上げ(金融=数字) 結果的により大きな貨幣を生み出す人(商品=お金)が素晴らしい人として評価される(p263)

・資本主義社会で生きる「 しんどさ」の核心は、ここにある、 人間は本来 お金を稼げるとか 偏差値が高いとか SNS でいいねをたくさん集められるとか、そんな単純なモノサシでは測れない存在である、私たちはもっと複雑で面倒くさくて、 だからこそ愛おしい生き物である、 しかし 欲望 拡張 原理の物差しは人間存在の複雑さや めんどくささを無視して、単純で 分かりやすい指標を押し付けてくる、 この物差しと心の奥底から聞こえる人間としての自分の声の両方に引っ張られることで、 私たちは資本主義の中で、日々不安や焦りを感じるのではないか(p264)

・いつも誰かに「追われている感覚」 それは資本主義という巨大なシステムが作り出したモノサシと、私たち人間の「測ることができない 価値」 との間に生まれる 会社を不可能な緊張関係であった(p264)

・資本主義との距離の取り方について、 時間については、 減っていく 残り時間ではなく、循環的な時間感覚を取り戻す・ 時間が足りないという前提を疑う、時間の中で泳ぐように生きる・ 時間 支配の内面化 を防ぐ、 大切な人との時間はお金に換算できない価値をもたらす(p273)

・成長については、 人類は進歩していくという物語から降りる勇気を持つ、その瞬間を 全力で楽しむ・ 現状維持を悪とみなす 思考パターンを疑う・ 休むことを自己目的化して休む(p274)

・数字については、 数値管理 の弊害をよく理解する・ 測定することに執着していないか 定期的に点検する・金融の力を活用しつつ、しかし 過度に期待しない(p276)

・ 労働については、 一生懸命 働かないといけないという価値観の内面化に気づく、 創作活動など賃金労働以外の労働にも喜びを探す・ 働く自分は本当の自分自身であるという思い込みを切り離す・ 労働に上乗せされた機体を解体する、労働は大変なものと割り切ることも大事である(p277)

・お金については、 お金を稼ぐ場面では堂々と稼ぎ それ以外の場面では別の価値基準で生きる・ これ以上は 余剰であり、あれば儲けもの という 線引きをする・欲を敵とせず 観察対象とする(p279)

・消費については、 欲しいという感情の出所を問い直す・ SNS は 消費の劇場であることを意識する、 近づいてもすぐに離れるなどの工夫が必要である・ 楽しむことの 強制 という 逆説に気づく、 暇や 退屈 こそ最高の贅沢であると捉える(p280)