・農業革命の影響が完全に社会に及ぶまでには1000年、産業革命の場合は数百年かかったが、デジタル革命はわずか数十年である。我々が不意打ちを食らって混乱しているのも無理はない(p20)
・未来はすでにここにある、均等に行きわたっていないいないだけだ、というものがある。テクノロジーの懐胎期間は驚くほど長い、突然登場するように見えて実はそうではない。過去・現在・SFで描かれる未来、この3つが2050年を見通すための鍵になる。大きな可能性を持ったテクノロジーが出てきたとき、我々がその活用方法を見出すまでには時間がかかる(p22、25、83)
・VRのイメージを現実世界と融合させた拡張現実(AR)が、タッチスクリーンに続く新世代のコンピュータ・インターフェースになる可能性が高いという共通認識がある(p30)
・自動運転タクシーの登場で、典型的都市の車両数は、90%減少するといわれる。自家用車を持つ必要がなくなり、駐車場に使われている場所(アメリカの都市では20%)が住宅や公園に転用できる(p31)
・今後20-30年で大きな進歩の可能性とそれに伴う混乱が見込まれる分野(VR,自動運転、宇宙旅行、人の遺伝子編集)を総合すると、全体的な状況は17世紀半ばの科学革命期と似ている。顕微鏡、望遠鏡などの新たなツール、テクノロジーが、新たな科学的・数学的方法論と結びついた時期(p35)
・ムーアの法則、デナード則(小型化するほどチップは高速省電力となり、製造コスト低減)は効力を失いつつある。今では小型化するほど製造設備コストが増加し収益上のメリットが少なくなった(p43)
・コンピューティング能力の大部分はデータセンターという見えない場所に置かれ、ユーザーが必要な時に必要な量だけを使うようになる。つまり、電気水道のように、必要に応じて使う公益サービスとなる(p49)
・マインフレーム型のコンピュータの第一の波を制したのはIBM、第二の波はパソコン(OSとデスクトップ用ソフトウェア)で、アップルとマイクロソフトが制した、第三の波である、ウェブ1.0はインターネット、アマゾンやグーグル、第四の波であるウェブ2.0は、クラウド・モバイルコンピューティングをもたらし、アップル(iPhone)・グーグル(アンドロイド)・アマゾンが勝者となった、第五の波はビックデータ、第六の波はIoT,スマートマシン、第七の波が人工知能(p61)
・20世紀の目前に起きた二つの出来事が極めて重要、1)1897年、トムソンにより、たいていの物質には電子が含まれているという発見、2)1900年に、プランクが導入したプランク定数、作用=エネルギー×時間で、それ以上小さく分割できない単位(つまり量子)からなることを意味する、1905年にはアインシュタインが、光がそれ以上分割できない粒子状の塊(光子)として進むとした(p100)
・物理学の基礎方程式とされているものは、4つの基本力(重力、電磁力、強い力、弱い力)を支配する、互いに関連する4つの中核理論に体系化されている、これらは、3つの原理(相対性の原理、ゲージ不変性の原理=局所ゲージ対称性、量子力学=量子原理)である(p104)
・コンピュータの基礎となっているチップは、どんな些細な欠陥があっても機能しなくなるので、塵ひとつないクリーンルームで製造され、損傷すると回復できない。だが人間の脳は三次元的で、クリーンルームとは正反対の、混沌としたコントロールの緩い状態から生まれ、欠陥・損傷を乗り越えて機能できる(p117)
・神経インターフェースによって、人間の脳はインターネットと直接つながるだろう、皮質モデムなど(p130)
・2050年の農場について1つだけはっきりしているのは、今よりも遥かに機械化・自動化が進み、工場に近いものになっている。ロボット式トラクターやその周辺器具、ロボット式コンバイン収穫機、作物の成長ぶりをモニタリングするドローン・衛星など、スプリンクラーは畝沿いに走らせた配管ネットワークになり、殺虫剤や殺菌剤で葉に直接つけるものは専用ロボットを使って、ドローンからの情報に基づいて捜査、雑草はレーザーで除去(p166)
・3Dプリンターを使って翼のモールド(型)をつくるという試みは、研究段階から試作段階へと移った(p197)
・太陽光発電と風力発電の成長率を過小評価してきた、太陽光発電が2030年に世界発電量の1%になると予測したが、実際には2015年であった(p198)
・世界の発電容量と比べると、既設の蓄電容量は微々たるものだが、今後数十年で変化するだろう。カリフォルニア州では、2020年までに1.3ギガワットの蓄電能力の追加を義務付けしている、テスラモーターズは、パナソニックと組みネバダ州に5兆ドルを投じた、ギガファクトリーにおいて、家庭用蓄電池(パワーウォール)、企業用蓄電池(パワーパック)を製造する(p199、201)
・石炭から天然ガスへ転換しているのは、アメリカのみ。他の国はパイプラインや海上輸送のためコストが高いため。安価な石炭や価格低下の進む再生可能エネルギーを選択するだろう(p206)
・中国は、2015年12月に新たな炭鉱開発の三年間停止を決めた、また風力・太陽光・原子力などの技術において世界をリード(p207)
・ライプチヒにあるBMWの工場では、シートに樹脂を注入してプレスして、硬く軽量な車体のパーツに成形していく、最後はロボットがパーツを接着して車体を組み立てる。BMW、i3の製造ラインは静か、溶接の火花もない、さび止め塗布もない、エネルギー消費は50%、水消費は70%少ない(p211)
・3Dプリンターは、プラスチック、ガラス、金属、セラミクス、バイオ材料まで、幅広い材料から物体を印刷する。従来は、切断・ドリル・機械加工により材料を削り取っていたのに対して、3Dプリンタでは、材料の層を積み重ねる。材料の無駄も少なく、硬い物体の内部の造作ができて、従来型の製造ツールでは難しい、不可能な形状も作れる(p217)
・3Dプリンターはすでに中国で大量生産ラインに登場、電子機器の委託製造大手ライトオンは広州の工場で、ニューメキシコ州・アルバカーキのオプトメック社が製造したプリンターを使っている。以前は電子回路をつくり、それからロボット・手作業で電子機器にとりつけていたが、今ではコンポーネントを直接、3Dプリンターを使って電子機器に埋め込んでいる、中国企業ウィンサンは、住宅を印刷している(p219)
・製品のカスタマイズ化が容易になり、製品を少量でも効率的につくれるようになるので、企業は市場の近くにいるほうが有利になる。海外流出した製造業の多くは国内回帰するだろう(p222)
・ポーランドにある研究機関、モラテックスでは、弾丸が当たるとそれを止めるために一気に粘性が増す「非ニュートン流体」の開発に取り組んでいる。このような「剪断増粘流体」は今日の防護服に使われている、ケプラー(アラミド繊維)やセラミックスと比べて軽く、柔軟性も高い(p229)
・2015年に米国海軍長官は、海軍が購入する有人爆撃機は、ほぼ確実に、ロッキード・マーチンの「F35」で最後になると語った。2050年には昆虫のように飛ぶ、スパイ用モデル、犬のような姿で落ち葉や木材を燃料にしながら何か月も稼働し続ける補給用・攻撃用モデルまで、様々なドローンが活躍する(p230)
・水上艦が攻撃にさらされやすくなるのに伴い、海軍の活動が水中に移行、潜水艦が大きな役割を担うようになる(p234)
・生死にかかわる重要な意思決定を下し、自力で失敗から立ち直るための自由を認められて育った西欧人は、創造力・独創性を発揮できる。これは戦闘中に予想外の機会が生じたとき、柔軟に戦術を修正する能力につながる。非民主的国家で育った兵士はそのようなことができない(p236)
・身の回りものがすべてコンピューティング能力をもったら、何をコンピュータと呼べばよいか。こうした変化を推進するのは、ユーザと仮想現実、その親戚である拡張現実、そしてクラウドとのやりとりを可能とするテクノロジーである。VRを経験した人は、それを単に画面上でみた光景ではなく、実際に訪れた場所の記憶であるかのように語るVRと、デスクトップコンピュータが対であれば、ARと対になるのはスマートフォンである(p247、250)
・テトリスが世に送り出されたのは、2015年基準で33年前、それから今日までにコンピュータゲームは不気味なほどリアリティがあり、複雑になった(p249)
・2050年には、一部の人を除いて、スマートフォンの代わりにAR(拡張現実)眼鏡を使っているはず。スマホを見るのではなく、目の前の道に、たどるべき順路が示されるようになる、レストランはメニューが不要、多言語を話す人との会話はリアルタイム翻訳が流れる(p251)紙の新聞を発行しなくなった新聞社が多い、ロンドンの公共バスは現金による支払を受けつけなくなった、タクシーの標識をつけず専用アプリでしか呼べないタクシーが走っている、こうした変化がすべて初代iPhoneの登場から10年以内に起きていることを考えればあり得るだろう(p252)
・2050年までには、機械に直接われわれの脳波を読ませるようなシステムが誕生しているかもしれない、エモーティブという会社は、脳とコンピュータのインターフェースの可能性を研究している。それが実現する前には、モノを見るだけ、あるいは、まばたきするだけで機械を制御できるようになるだろう(p257)
・年長者は一日スマートフォン画面を見ていると文句をいうが、子供たちは、そうしたデバイスを通して身の回りの世界と関わっている。テクノロジーが変わっても、人間の本質は変わらない。血の通った世界とのかかわりを持ち続けたいと思うのである(p263)
・2016年3月23日、マイクロソフトはAIベースのチャットロボット「Tay」をツイッターに登場させたが、わずか16時間後に引っ込めた。邪悪なマシンに変貌したので(p289)
・食器洗浄機がその任務を遂行できるのは、そのシンプルな能力を中心に環境が構築されている(エンベロープされている)から、同じことがアマゾン倉庫ロボットにも言える。自動運転車も、一般化するのはわれわれがそれに適した環境をエンベロープできたときである(p291)
・スマートテクノロジーは、作業の遂行においては人間より優れているが、だからといって、思考においても優れていると誤解すべきでない。デジタルテクノロジーは思考そのものをしない(p296)
・19世紀が蒸気、20世紀が石油で動いていたとすれば、21世紀の動力源は、データにある(p303)
・これまでの35年と同じペースでコンピュータの性能が高まるとして2050年の生活を想像すると、3つのトレンドがある。1)今日困難なことが容易になる、2)お金のかかることが安価でできる、3)不足しているものが潤沢になる、これが、医療・教育・法律に影響する(p304)
・従来無料で使えたフェイスブックやグーグルは、われわれが進んでデータを吐き出さなければ有料化するだろう、2050年にはプライバシーは、飛行機のビジネスクラスや別荘のような贅沢品となる(p315)
・技術革新は、定型業務に従事する者から交渉力を奪っていく、再現可能な数式に落とし込める仕事は例外なく、インテリジェント・マシンに取って代わられるだろう。週当たりの労働時間が明記されない、ゼロ時間契約の初期形態となる。(p326)
・まず教育を施し、その後徐々に技能を開発していくという伝統的モデルは通用しなくなる、それに代わって生涯学習に力点が置かれる(p349)
・20世紀に誕生した最も重要な技術(しかも重要性が最も過少に評価されているもの)は、アンモニアの合成(大気中の不活性窒素を固定してアンモニア合成)で、人口肥料や爆発物へ応用可能となった。(p356)
・生産の急激な成長は蒸気機関が普及するはるか前に始まっていた、1780年代からイギリスの綿花は急成長した、この生産拡大をもたらしたのは蒸気ではなく、水車であった。水車の利用が限界に達しようとしていたときに救世主のように現れたのが、蒸気機関である(p361)
・蒸気動力によって投資家は時間と場所の制約から解放され、好きな場所に工場を建てられるようになり、労働力の集中と活用ができた。動力として水力よりも蒸気を選好した理由は、技術そのものが秘めた力とか意思とは無関係、資本家と労働者という二つの集団の社会関係の結果として選ばれた。技術は産業革命の原因ではなく、その結果である(p362)
・ウィルチェックが指摘するように、タイムトラベルは物理法則によって完全に実現性が否定されたSF技術の一つである(p369)
・本書で提示される明るい未来は、すべて条件つきである。食糧問題は起きないというのは、われわれが遺伝子組み換え作物など食料分野におけるテクノロジーを受け入れば、という但し書きがつく。今よりもっと良い未来を作り出せるかは我々次第である(p380)