・日本政府は2020年秋に2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を宣言した、それを受けて2035年に純粋なガソリン車の新車販売を禁止することが決まった、それ以降は国内でHV,EV FCVなどしか売ることはできず、新車販売市場からガソリン車は姿を消す。2018年の戦略会議では、「2050年に100%電動化」を目標にしていたが、それが10年以上も前倒しになった(p4、36)
・CO2排出量で重視されるのは、自動車ならば走行時だけでなく、ガソリンなどの燃料の採掘から精製、車の製造など全ての段階で排出されるCO2を合計する「ライフサイクルアセスメント=LCA)が重要となる。日本自動車工業会がIEAのデータを元にしてLCAで電動車両を比較すると、今の日本の電源構成では、EVの方がHVよりもCO2排出量は多くなる(p19)
・2020年12月にまとめた「グリーン成長戦略」では、燃料のカーボンニュートラル化が盛り込まれ、2050年以降も内燃機関の選択肢を残した、ガソリンの代わりに発電所や工場から出るC O2と水素を反応させる合成燃料、トウモロコシなど植物から作るバイオ燃料を利用する方法である、しかしガソリンに置き換われる代物ではない(p48)
・HVがエンジン車に比べてエコなのは、減速時にエンジン車ではブレーキの摩擦熱として大気に放出してしまうエネルギーを「回生ブレーキ」という仕組みを使って回収している、減速している時も車輪は回転していて、その回転エネルギーをモータに伝えている、電動車には4種類ある(HV,PHC,EV,FCV)あるが、共通しているコアシステムは、モータ・電池・PCD(パワーコントロールユニット)である(p50、51)
・4類の電動車を合わせた電動化率が35%の日本は世界で見ると、ノルウェー(68%)に次いで2位、2019年の新車販売430万台のうち、HV:34%,EV0.49,PHV0.42,FCV0.02%である(p53)
・現状の燃費規制は、Tank to Wheel(タンクから車輪)で、HVのCO2発生量はガソリン車の52%でありほぼ2倍の燃費向上である。走行時だけで考えれば、EV,FCVはC O2を発生しないので、ゼロとなる。対象をもう少し広げたのが、Well to Wheelであり、Well to Tank(油井から車輪、EVの場合には発電所からバッテリー)を加えたのものである、この場合、HVはガソリン車の52%に減る、EVは走行中については世界共通でゼロであるが、発電段階を見ると国ごとに大きく異なる。電源構成が異なるからである、EVは多くの国でHVよりもCO2排出量が減るが、中国やインドでは排出量が増えてしまう(p58)
・EVを製造する際(大量のリチウムイオン電池の製造)に必要なエネルギーはHVやガソリン車の2倍を超えているので、LCAで比較すると日本ではEVの方がHVよりも排出量が多くなる、日本においてLCAでEVがHVよりもエコな自動車になるには、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを使った再エネルギー発電や原子力発電が増えなければならない(p61)どのエコカーを選択すればいいかを考える際には、どの時点で考えるかという時間軸と電気を発電する電源構成という2つの変数が存在する。ベストと言えるエコカーはそれぞれの時点、国、地域によって異なってくる、これが電動化議論を混乱・複雑にしている(p63)
・トヨタによるとモータ出力はHV誕生の1997年比較で200%、モータ体積は50%に減った、つまり体積比当たりの出力は400%アップしている。バッテリーの重さが30−50%減り、体積は60%減った、PCUのエネルギーロスは80%減り、体積は50%減った。それぞれの部品や機構を改善し続けたことで、コアシステムの性能アップとコンパクト化が実現した結果として、トヨタのHVの燃費は40%ほど良くなった。コアシステムはEV,PHV,FCVのコアシステムでもあるので、これがトヨタが他の自動車メーカに比べてHVに拘り続ける所以である(p71)
・製鉄業では鉄鉱石から鉄を作る際に大量のCO2を排出している、それを水素還元精製法という新しい仕組みで鉄を作ればC O2は基本的に排出せず、水のみの排出となる。また火力発電所のガスタービンで水素を燃やしてCO2排出量をゼロにする。このため水素製造を今後増やす予定である(p89)
・乗用車以外の大型バストラック、重機などのカーボンニュートラルの実現を考えた時、 FCVへの期待が高まるのは必至である。EVは今後、全個体電池など新しい電池が実用化されて今よりも使い勝手が良くなってきた時、 FCVが乗用車市場で大きなシェアを持つかどうかわからない、乗用車よりも稼働率が高い大型バストラック、重機の市場ではFCVはEVよりも参入しやすい、燃料の充填時間が短く稼働率を上げやすいから(p91)2021年3月、日野自動車といすゞ自動車を巻き込んだ商用車グループの形成へと発展し、コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーが設立された(p92)
・テスラは2020年度に初めて黒字(780億円)となった、他のメーカにはない利益がある、CO2排出権取引による売却益が1700億円あり、これを除くと赤字である(p103)
・欧州勢は2015年頃まではエコカーとしてクリーンディーゼルはHVを普及させようとしていたが、ディーゼルゲートによりディーゼル車が客離れを招いてしまった、HVは技術的にトヨタなど日本勢に劣っているので、EV化へ舵を切り、苦境を脱出したいという苦し紛れの賭けでもあった、この賭けはカーボンニュートラルという制作目標が追い風となって今の子ところは吉と出ている(p109)
・中国やインド、日本などの火力発電の比率が高い国ではEV化を急げば短期的にはCO2排出量を増やすことになる、一方ノルウェーのように電気をほぼ水力発電で賄っている国では、EVを走らせても発電所からCO2が排出されることはなく、電動化率は高い(p126)
・CASEは4つの構成要素が別々に機能するのではなく、相互に連携しながら機能している。1)コネクティッド(C)x自動運転が生み出すサービス、2)コネクテッドx電動化が生み出すサービスで、自動運転からは移動の自由を実現するサービス(S)、電動化からは脱炭素を実現するサービス(S)がある、いずれも車がネットにつながっていることがサービスの基本である(p137)
・自動運転車になると、車の所有形態が変わると見られている、所有からシェアになる。年間1.2万キロが境界となる。自動運転は、タクシーなどの業務用に使われる、ドライバーの人件費負担は亡くなり、長時間、業務に使えるので稼働率が上がり、利益が確保できる(p145、146)
・自動車の平均的な保有期間を考えて逆算すると、消費者は2030年後半になると、新車購入の際にはHV,PHVなどガソリンを燃やす車から離れ始めるだろう。それに向けて自動車業界も事業構造を変えていかなければならない(p173)