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summary

世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ (文春新書)

世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ (文春新書)の写真

・新自由主義的な世界観とは、1930年代以降、世界システムの支配的な世界観となった「大きな政府」への挑戦として始まり、1991年のソ連崩壊を機に、新しく世界標準システムとして受け入れられるようになった「小さな政府」の価値観を指す(p6)

・既存システムが大きく変わるときは、それを支えてきた世界観、統治感も変化する、7世紀の大化の改新は、それ以前の豪族中心の統治感が揺らぎ、天皇を中心として、唐の律令制や儒教を応用した世界観への変化につながった、鎌倉幕府と武士の世、黒船来航と明治維新、昭和の敗戦、20世紀末の東西冷戦の終結も同じである、重要なポイントは、新しい勝者や敗者が生まれる点である(p9)

・今この瞬間、私たちの目の前で、次の30年を想定するであろう、新たなカジノのルールが書かれようとしている、同時に日本の社会・経済は「失われた30年」というデフレの常態から解き離れつつある、日本はすでに変わり出した(p11)

・新自由主義の三大要素は、1)大きな政府よりも小さな政府、2)政府や政治に代わる裁定者の役割を、市場に委ねる、ルールを決める、3)個人の権利と選択を尊重、政府・宗教・個人の生き方に干渉するものを最小化する(p21)

・小さな政府が瓦解する中で大きな政府に振れたが、そのパターンは、1)共産主義型の大きな政府、2)ニューディール政策に代表されるフランクリン・ルーズベルト型の大きな政府、3)日本の軍国主義を含んだ広義のファシスト型の大きな政府、経済・社会への政府介入を開始した(p25)

・新自由主義が世界に普及すると、マネーが効率的に流れることで、ビジネスコストが低下し、インフレが起きにくくなる、物価が安定し、結果として金利が低下する、投資リターンを得るまでの時間を長く設定できる(p35)

・人類史上、これほど短期間に経済構造と社会的価値観が劇的に変化した時代は無い、当然、ついていけない人、ついて行きたくない人もいるので、歪みが生まれることになる(p45)

・戦争の原因は大きく2つある、1)富の搾取、2)宗教戦争のような価値観を巡る争い、この2つは国家をして殺戮に駆り立てるものである、この2つで社会が分断すると、その対処は非常に難しくなる(p51)

・伝統的な価値観と新しい生き方の折り合いをどのようにつけ、双方が妥協しても良いというバランスをどのように構築するか、大事なポイントは、全ての市民ではないにせよ、一定数以上の市民がこれなら他者と共存できる、そう感じる均衡点を見つけ、それを正当化する世界観を打ち立てることである(p61)

・世界が金融積極主義を追求し、事実上の通貨切り下げ競争に走っているとき、日本だけが慎重な金融政策運営を実施すれば、円高・株安によって日本が大負けするのは明白であった(p111)

・今まさに世界は、再びアメリカを地殻変動の震源地とする、統治観の大転換のただ中にいる、この3度目の転換は、過去二回と同様、この先数十年の世界のあり方を規定することになる、これからの数年間は、歴史家たちが、数十年後に「あの時が日本の転換点だった」と位置付ける時期に相当すると考える(p119)

・アメリカが態度を変える2つの条件、1)経済政策の基本的前提(世界観、統治観)をアメリカが大きく変化させる、2)競合国のGDPがアメリカの50%近くに迫る(p131)日本の経験を鑑みると、中国はすでにアメリカからの容赦ない圧力を引き出す2つの基準を満たしている、これは今、歴史の転換点を迎えていると考えるに足る根拠があることを意味している(p134)

・日本の場合は、全員が10%の賃金カットを受け入れる代わりに誰のクビも切らない、失業率を上げない、という形をとった、しかし企業は損切りが済んでいないので新しい成長局面に入ることができない、一方、毎年全社員が10%の賃金カットを受け入れているので、毎年アウトプットプライスも下落し続けて、その結果として日本は長期にわたるデフレ、ないしはディスインフレに陥った、1999-2022年まで、ベア上昇率がゼロ(p140、202)日本は経済効率を犠牲にして、雇用の維持を図ることにした(p144)これは、日本人はデフレを、つまり「失われた30年」を選択したと言える(p145)

・活力が低下した村では稼げないので、村人は別の村に出稼ぎに行く、そのことは、日本からの海外直接投資が2000年代半ば以降、顕著に伸びていることで確認できる(p141)

・新興国が覇権国家にチャレンジする場合の解決方法は3つしかない、1)覇権国と新興国が戦争で勝敗を決する、例として、大日本帝国による真珠湾攻撃はこのパターン、2)覇権国が新興国にその座を譲る、またはひざまづく、例として、第一次対戦後に大英帝国がアメリカに、1980-1990年台に日本がアメリカにとった態度、日本は構造協議と称する、幾多の経済弱体化要求を飲み、国内の生産能力を海外に移転した、3)冷戦、例として、第二次世界大戦後の米ソ冷戦、である(p176)

・アメリカは一度ある国を自らの覇権を脅かす国として認識すると、相手が潰れるまで決して、その手を緩めることはない、大日本帝国は熱い戦争で、ソ連は冷戦で敗れた(p178)

・中国のGDP統計は少し特殊で、他の主要国が総支出ベースのGDPデータを用いているのに対して、中国は全ての経済部門の付加価値に基づく総生産ベースで統計を作成している、理論上は両者は一緒になるが、中国の場合、両者の算出方法にギャップがあり、それは拡大している、2010-2016年の中国の公式GDP成長率は、毎年1.8ポイントも過大評価されていた可能性がある(p183)

・台湾有事の際、米国のインド太平洋軍が中国に負ける可能性が示唆されている、主な理由は、中国が余りにも多くのミサイルを配備しているので、実際に軍事衝突が発生した場合、米軍は第一列島線の西側では身動きが取れない可能性が高い(p186)

・ロシアはエネルギーが豊富にあるので、直接売ったり必要なものとバーター取引ができるので、G7諸国によるロシアのドル決済からの隔離はそれほど効いていない、しかし中国はエネルギー輸入国なので、ロシアのようにいかない、中国が外国に売るものは製品なので、基本的にはドル決済が多くなる、資本勘定の自由化に踏み切る覚悟がないので、中国はドル決済にチャンレンジする日がいつ頃到来するのかは全く見通せない、人民元の国際決済比率は5%以下、外貨準備としては2%しか保有されていない(p189)

・日本の失われた30年は、ゾンビ社員が退職するまで待った30年であった(p195)ゾンビ社員を抱えていたコストをオフセットするため、氷河期世代の学生を非正規雇用にすることで労働コストを抑えた(p200)最大のインプットコストである賃金が上昇するようになれば、デフレは終わるはず(p201)

・アメリカは強い日本を必要としていて、その度合いは冷戦期を上回る、ソ連が敵の場合、舞台はヨーロッパであったが、今度の敵は中国なので、舞台は東アジアである、アメリカは強い日本というパートナーなしには、有効な対アジア政策を遂行できない、それは誰がアメリカの大統領になろうとも同じである(p205)

・新自由主義の時代には、企業経営者にとって「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」調達する「ジャストインタイム」が理想的なサプライチェーンであったが、このビジネスモデルは通用しなくなり、万が一に備えた「ジャストインケース」のサプライチェーン構築を迫られている(p207)

・日本企業は国内において、生産設備投資と人材投資の両方を再開している、雇用調整(クビキリ)を許されなかった日本企業が生き残りをかけて、海外に生産設備を移転し、国内での人的投資を抑制し続けたのが「失われた30年」だとすれば、その逆流が始まっているのは明らか(p208)

・ゾンビ社員の雇用維持装置として主たる働きをしてきたのが、中小企業のサービス業である、日本のサービス業の生産性はアメリカの6賭け程度、しかし逆に言うと、日本のサービス生産性がアメリカの8賭けまでいけば、10ポイントも生産が上がることを意味する(p214)

・低賃金で人が雇えなくなると、賃金を払える企業(例えばイオン)が、払えない企業(例えば、いなげや)を淘汰する時代になる、最終的に利益を確保し、賃金を払えることができる企業だけが生き残ると、その業界は適正化し、そこで働く従業員も毎年給与が上がることになる(p215)

・岸田政権が非常に素晴らしい功績を上げた、世界の転換期とは新しいルールが書かれる時だ、と言うことを明確に理解した上で日本の存在感を高めることに尽力した、30年以上ワシントンにいるが、岸田総理のように歓待された日本の首相はいない、ワシントンや国際金融市場の評価は素晴らしい(p248)具体的には、防衛費の倍増、反撃能力の保有、日米韓関係の再構築という結果を出した、自衛隊をアメリカ軍と「共に戦う」実際の軍隊に変質させるというワシントンでの演説は、ポスト自由主義の日本は真の意味で、アメリカの軍事パートナーになるとの強い意思表示と受け止められた
(p249)